副腎腫瘍(猫の高アルドステロン血症)

消化器

7歳の雄猫、Nちゃんが、耳を床につけて顔を上げられなくなった、食べ方が下手になった気がする、などの症状で来院しました。外耳炎、中耳炎などの耳の病気、頭の中の病気を疑ってX線検査を行いましたが、異常が見つからず、その他のスクリーニング検査を実施しました。すると、血液検査で重度の低カリウム血症と、腹部超音波検査で右副腎の腫大が確認されました。

右副腎の超音波検査画像:厚み約2cmと明らかに腫大している
左副腎の超音波検査画像:左副腎の厚さは0.24mmで、萎縮~正常と判断された

猫の低カリウム血症は、アルドステロンという副腎で生成される腎臓機能や血圧を調整するホルモンが増加する高アルドステロン血症を発症すると、カリウムの排泄が過剰になってしまい起こることがあります。低カリウム血症を発症すると、後肢の脱力や首を持ち上げられないなど筋力低下の症状がみられます。また、高アルドステロン血症は、原発性(副腎腫瘍など)と続発性(腎不全など)のものが知られています。Nちゃんの場合、明確に副腎が腫大していたため、原発性(副腎腫瘍)が疑われます。念のため、アルドステロンの測定を行ったところ、高アルドステロン血症であることが確かめられました。

以上から、Nちゃんの不調の原因は、副腎腫瘍が疑われました。悪性であれば、転移や破裂による大量出血のリスクが高いと考えられ、寿命を全うできない可能性もあります。術中から術後の死亡率は決して低くはありませんが、飼い主様と相談の結果、副腎腫瘍の摘出を行うことになりました。

注意!以下の写真は開腹手術中のものです。苦手な方はご遠慮ください。

手術中の画像1

手術中の画像2

手術中の画像3

手術中の画像4

手術中の画像5

右副腎は太い血管に隣接する臓器で、かつ、小さな血管や神経がたくさん入り込みます。慎重に剥離・止血をして、安全に切除することができました。術後、副腎機能低下症や、出血をモニターしながら点滴等で4,5日入院してもらい、Nちゃんは無事に退院することができました!

病理検査の結果は、『副腎腺腫』でした。良性でしたので、切除で完治が見込めます。

同じような症状でお困りの場合には、当院へ一度ご相談ください。