膝蓋骨内方脱臼を伴う前十字靭帯断裂に対する治療(TPLO-mTTT)

整形外科

今回紹介するのは、膝蓋骨内方脱臼を合併する前十字靭帯断裂の治療をした小型犬のRちゃんです。右後足を跛行しているとのことで来院しました。

右後肢の脛骨が、左に比べて前方に移動しており、膝関節内の前十字靭帯が断裂している可能性が高いと考えられます。赤点線と白点線の距離が長いほど靱帯断裂・損傷により膝関節が不安定になっている可能性があります。

正面からX線検査で観察すると、左右の膝蓋骨が内側に脱臼しています。

触診と画像検査により、グレード3の右膝蓋骨内方脱臼を伴う前十字靭帯断裂が疑われました。犬の前十字靭帯断裂に対し、当院では3つの治療方法をご提案しています。

  • 関節外法
  • TPLO
  • 温存療法

小型犬の場合、前十字靭帯断裂に膝蓋骨脱臼を伴うケースが多く、従来はこの症状に対する治療として関節外法が選択されましたが、近年、前十字靭帯断裂に対し最も効果的な治療と考えられるTPLOと膝蓋骨内方脱臼の治療が同時に行われることも多くなってきています。今回、Rちゃんに対し、TPLOを実施した後、膝蓋骨内方脱臼整復(大腿骨滑車造溝術・脛骨粗面転移術・外側関節包縫縮)を行いました。

術後、脛骨の前方への移動が制御されています(膝関節が安定化し、運動機能の回復が見込めます)。
大腿骨の滑車溝に、膝蓋骨が整復されています。

Rちゃんは術後しばらく足がつけませんでしたが、痛み止め等でしっかり治療していただき、術後1か月の再診時にはしっかり接地できるようになり、その後、経過は順調です!