横隔膜ヘルニア(子猫の外傷性横隔膜ヘルニア)

呼吸器

保護ネコのNちゃんです。ある日、道端で倒れていたところ、今の飼主さんに保護されて当院へ来院しました。呼吸がとても苦しく、すぐに酸素吸入が必要な状況でした。酸素吸入しながらX線検査をおこなったところ、横隔膜ヘルニアが疑われました。

ガスを含んだ構造(おそらく消化管)に重なって心臓の陰影が不明瞭→横隔膜が一部破けて腹部臓器が胸腔内に脱出していると考えられる

体重が420gと、とても小さく、手術の負担は大きいと考えられましたが、酸素室下でも呼吸状態は改善せず食欲もない状態でした。手術をしなければ呼吸困難で亡くなってしまう可能性が高いため、破けた横隔膜を整復する手術をご提案させていただきました。

手術は、気管挿管し人工呼吸器による呼吸管理のもと慎重に進められ、脱出した臓器を元に戻し、破けた横隔膜を再建することができました。

術中写真:横隔膜を再建している

手術を終えた後は、胸の中にチューブを留置して気胸や出血などをモニターしつつ、酸素室で数日過ごしました。幸い、大きな合併症もなく酸素室から出て保護主さんのお家へ帰ることができました。

術後1週間:横隔膜の整復は維持されていた
術後1週間

術後半年:横隔膜の整復は維持されていた

横隔膜ヘルニアは野良ネコちゃんや、脱走した飼猫ちゃんで時折発症します。交通事故や落下など、大きな力が加わって発症するため、骨折や臓器障害など別の箇所にダメージを負っていることも多く、救命することができないケースもありますが、当院では可能な限り最善の治療をご提案させていただいております。

大きくなりました!『保護してくれてありがとうニャン!でも動物病院は苦手だニャン!』